‘'七条織成樹皮色袈裟''(しちじょうしょくせいじゅひしょくのけさ,Kesa,Priest’s Lobe)は正倉院に収蔵されている聖武天皇が使用したと想定される袈裟である。
樹皮の柄なので、見かけ上はかなり地味な図柄と色となっている。技法的にも素朴である。出家した僧侶は財産を持たないので、衣服はボロ布に見えるようにしている可能性がある。しかし、布を拡大すると模様の上に撚金糸を格子のように織り込んでいて、気づかないところで豪華になっている。文様の部分ごとに横糸の色を変え、2〜3種類の色糸をより合わせた杢糸を使用する。 「七條」は袈裟を7枚の長方形の布で横に波縫いでつなぐ袈裟の形式である。「刺納」は刺し子である。我が国で唯一の織成遺品とされる。織成は地緯糸と文様を表す色緯糸の二種の緯糸を用いて交互に織る技法で、綴織の一種である。綴織は文様を表す緯糸が織幅いっぱいに貫通せず、要所の部分だけを織り返す。複雑な機台を必要としないので、古代エジプトの綴織、南米ペルーの綴織、ヨーロッパのゴブラン織、中近東のキリムなどにみられる。
表は七条の織成を並べ、各条の間は紺平絹で界を為す。裏は唐花文様の紺綾を五枚継ぎしている。樹皮色とは布の裂を組み合わせて、樹皮にみえる風合いからきている。
東大寺献物帳には九領の袈裟が記録されている。 御袈裟合玖領 九條刺納樹皮色袈裟一領[碧綾裏p絹縁] 七條褐色紬袈裟一領[金剛智三蔵袈裟] 七條織成樹皮色袈裟一領[紺綾裏p綾縁] 七條刺納樹皮色袈裟六領(二領碧綾裏p絹縁 二領紺絹裏p絹縁 一領紺綾裏p綾縁 一領紺〓裏p綾縁) (『大日本古文書』4)
復元模造が平成18年から3ヵ年で行われた。その報告は参考文献1,2,3に書かれる。 龍村美術織物が担当した。
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