放射性炭素年代測定
2025-07-04


放射性炭素年代測定(ほうしゃせいたんそねんだいそくてい)は、炭素を含む有機物の炭素14の量を測ることにより、物質が存在した年代を客観的に推定するための測定方法である。

概要

自然界には、3種の炭素同位体(12C,13C,14C)が存在し、それぞれ重さが違う。 このうちC14は放射性同位体と呼ばれ、地球上に降る宇宙線が大気中の酸素等に衝突し、で原子核反応により作られる。C14は半減期5730年で放射壊変により徐々に減少していく。生成量と減少量がつりあうと環境中の14C濃度は一定となる。動植物が生命活動を行っている間は、動植物が体内に取り込んでいる炭素の割合は自然界での割合と平衡状態にある。 しかしその動植物が死ぬと、体内に取り込まれていたC12CとC13は安定しているのに対して、C14は新たに補充されないため、時間の経過とともに半減期に従って一定の割合で減少していく。C14が規則的に減少する性質が正確に時を刻む自然の時計の役割を果たすため、これを利用して3種の炭素同位体の割合を調べると年代測定を行なうことができる。

測定対象

炭素年代測定は有機物が測定対象となる。石器や金属などの無機物は対象外である。

開発者

アメリカの物理化学者であるウイラード・リビー博士のチームが開発した。

年代範囲

約50,000年前までの年代を測定できる。生物が死んだ時点の年代が分かる。木材は伐採年が分かる。放射性炭素年代測定で「おこげ」(炭化した米粒など)を測定する場合は稲を収穫したときの年代が測定される。稲作文化では、収穫後すぐに食べる場合が多いため、収穫から調理のタイムラグは数ヶ月〜1年以内と想定される。

AMS法

放射性炭素年代測定の測定方法には放射能分析法と加速器質量分析法(AMS法)がある。放射性炭素年代測定のうち、試料中のC14の数自体を直接数えるのが加速器質量分析法(AMS法)である。C14の崩壊を待つ必要がないので測定時間が短くて済み、しかも試料中大量にある14Cの数を直接測定するため測定効率が良い。AMS法では試料が微量でも高精度測定ができる。

較正

大気中の14C濃度は時代により一定ではないため、測定値(暦年代ではない)を実年代に補正する必要がある。放射性炭素年代の較正のためには較正曲線が必要となる。測定結果は較正曲線を用いて暦年代へと変換される。キャリブレーション(補正)という。年代較正は、2020年に発表された最新の補正曲線IntCal20(北半球大気)が最新で、0〜55,000calBPを扱うことができる。北半球と南半球の違い(SHCal20)、海洋のリザーバー効果(Marine20)にも対応している。

参考文献

  1. 中村俊夫、中井信之(1988)「放射性炭素年代測定法の基礎 : 加速器質量分析法に重点をおいて」地質学論集 pp.83-106
[古代史関連用語]

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