舟葬墓(しゅうそうぼ)は舟の形をした墓または舟自体を棺とする埋葬方法である。
舟・船棺葬送についての関心が高まっていると辻尾は指摘する(辻尾榮市(2010))。 刳舟を転用した舟・船棺は弥生時代の東奈良遺跡で2基発見されている。刳舟は、丸太をくりぬいて作られる最も原始的な形の舟である。舟底と舷のみで構成されるため、構造は単純であり、外力を受けても壊れにくい。棺を刳舟に転用している可能性も指摘されている。舟形木棺、舟形埴輪は船葬を想定しているとされる。大寺山洞穴遺跡は副葬品の年代から、約250年間に渡り洞穴が墓として使用されていたと判明している。舟葬の葬送儀礼を確認できたはじめての遺跡であった、
なぜ埋葬する棺に舟・船を使用したのであろうか。埋葬方法として舟・船を伴う儀礼は死者をあの世に送り、再生を願うものであったかもしれない。後藤守一は「黄泉の国、すなわち死者の国に死者がいく時に、舟を使うという考え方の行われているところでは、舟または舟観念の棺に葬る」と書いた。すなわち舟は死者を他界に運ぶ乗物(運搬具)であった。
和田晴吾(2009)は「奈良県巣山古墳で発見された船は、実際の葬送の折に、魂が他界へと旅立つ様子を現実の世界で再現するためのものであった」とする。棺は古墳の墓坑内に据えつけておく「据えつける棺」と推測され、船は遺体そのものを乗せて運んだものであった。,『隋書』倭国伝「葬に及んで屍を船上に置き、陸地これを牽くに、あるいは小を以てす」に対応すると和田晴吾(2009)は指摘する。 和田晴吾(2009)は古墳時代の人の死に係わる船の性格は2通りあると指摘し、@死者の魂を乗せて他界へと運ぶ船(舟葬)、A死者の遺体を入れて埋葬する棺としての船(舟葬墓)を挙げた。
辻尾(2011)によれば、舟棺・船棺は「古代の墓葬形式のひとつで、刳舟型の木棺を用いて葬具とする。スカンジナビア、ポリネシア、中国、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシアなど広い地域に広がるとされる(辻尾榮市(2011))。
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