コクゾウムシ(こくぞうむし)は節足動物門/昆虫綱/コウチュウ目/オサゾウムシ科の昆虫で、貯穀害虫である。 漢字では「穀象虫」。「米虫」、「角虫(つのむし)」ともいう。
細長い体形,硬い外殻,全身黒色,象の鼻のように長く伸びた口が特徴である。 もとはヒマラヤ南部の森林地帯に生息していた。約1万年前に西南アジアやヨーロッパに伝搬し、ドングリ貯蔵を契機として人間生活に入り込んだ。穀物農耕が始まると、貯蔵されているイネ・ムギ類に食害が起こるようになる。穀害虫化した時期は約9,000〜8,000年前と想定されている。日本全土に生息するだけでなく、熱帯から温帯にかけて世界に広く分布している。野外や麦畑などでも確認されている。クリやドングリ(スダジイ,シラカシ,マテバシイ)のような堅実類でも果実に割れや穴があれば、卵を産みつけて繁殖できる。 コクゾウムシの圧痕が発見されている遺跡は,北は青森県,南は沖縄県まで全国に分布することが判明している(小畑(2016))。
かって縄文後期後半に土器にコクゾウムシの圧痕が見つかったとき、縄文後期農耕の有力な証拠とみられていた(山崎純男(2005))。その後、安藤広道がこれに疑問を呈し、安易な圧痕同定・土器型式比定・論理展開に慎重論を提示した(安藤,2006, 2016)。小畑弘己(2012)は「貯蔵乾燥植物性食物(ドングリ・クリ・マメ類)を加害した家屋害虫であり,集落の定住性と大型化と深い関係があった」と指摘する。つまり、縄文後期後半の土器のコクゾウムシ圧痕だけでは穀物農耕の証拠にはならない。堅果類のデンプン質があれば、コクゾウムシの幼虫は成長できるのである。コクゾウムシの土器圧痕は縄文後期のイネ農耕ではないという証拠が2つある。
コクゾウムシは飛翔が苦手であり,人や穀物に付着して運ばれること以外では海峡を越えること(数キロにわたる移動)は不可能である。北海道にクリがもたらされたときに、クリの果実に潜んで海を渡ったと考えられている。
コクゾウムシは15度以下あるいは33度以上では繁殖できない。成虫は低温では休眠状態で越冬し、一部の幼虫は穀物の粒の中で越冬する。成虫の寿命は100日から200日程度である。
卵は5日間、孵化して幼虫になるまで20日からlヵ月を要する。その後、蛹で5日を過ごし成虫となる。雌は64.3±38.6 日 、雄は100.9±46.4 日生息する。メスは年間3回から4回産卵する。穀物1粒あたり1個の卵を産み付ける。
セコメントをする